2023/07/22 16:47

今回は、🔰初心者の方に向けた、夏の飼育アドバイスです。

夏季(特に6月後半〜9月)は日中も夜間も気温が高くなるので、メダカ飼育初心者の方は心配かと思います。メダカ飼育にチャレンジしたけれども、死なせてしまうとショックですよね。
ですが、ご安心ください。
私も四季を通じて屋外飼育と屋内飼育の両方をしていますが、毎年この日中30℃を超える時期でも、メダカたちは元気に泳ぎ乗り越えています。ここでは、私の飼育方法から、メダカ飼育の初心者の方に向けて、夏を乗り切るための「ちょっとしたコツ」をお伝えします。このコツで解説した内容をおさえておけば、夏に限らず、春から冬まで一年を通じてメダカ飼育のレベルアップができることをお約束します!それでは行ってみましょう!

私がメダカ飼育で特に気をつけているのは次の4点です。

- 高い水温
- 酸素の量
- 栄養不足
- 水中の有害物質(塩素とか)

夏はメダカにとって、エネルギー切れを起こしやすく、酸欠にもなりやすい季節です。この季節を乗り越えるための4つの項目を1つずつ解説していきます。

高い水温対策編

まずは夏といえば高水温ですよね。乱暴に言ってしまえば、水温を30℃未満に保ちましょう、という事です。水温は次の酸素の量とも関係しますが、水温が上がると、水中の酸素(溶存酸素量)は減っていきます。20℃より25℃の方が酸素は少なく、同様に28℃、30℃、32℃...と水温が上がるほど、どんどん水中の酸素量は減っていきます。また、水が皮膚と常に接しているメダカにとって、単純に水温が極度に高くなると、暑さに耐えられずに弱っていき、終いには死んでしまいます。水槽に指を入れてみて、暖かいな、と感じたら危険サインです。ではどうすればよいでしょうか?

基本は「水の量を多くする」「容器は深いものを」「こまめな水換え」「日陰になる時間を長くする」です。

水の量は成魚1匹につき1リットル以上としてください。夏場のこの時期は、可能ならもう少し増やしてあげると安心です。

しかし、水量が一緒でも容器が浅いとすぐに空気と接している水面側から水が熱くなってきてしまいます。底が深い容器では、水面が狭いので、深場の水温が低く保てます。これで水温管理が少し楽になります。
注意点として、自分は初心者だからと小さな飼育容器、とくにカブトムシとかのプラスチック飼育ケースを選ぶ方がいますがNGです。小さな容器ほど、熱しやすく冷めやすいです。暑い季節は、虫の飼育ケースくらいの小さなものでは、すぐに熱々のお湯になってしまいます。プラスチックは水温を上げやすいので、この観点でも、プラスチックケースは初心者の方にお勧めできません。

水換えはなるべくこまめに行いましょう。外の気温が上がると、それに合わせて水温も上がります。初心者の方でも、理想は1日1回の1/3程度の水換えです。ただし、水換え時は水質の変化に注意しましょう!

そして、水槽が日陰に入る時間を長くとってください。いくら水量を増やし、水換えを頻繁にやったとしても、太陽が直接あたる日向に水槽があると、中の水はすぐに煮えてしまいます。これでは、本末転倒になってしまいますよね。そこで、水槽を日陰に移動したり、すだれや植物、洗濯物などで日陰にしましょう。

夏の水温について覚えておいてもらいたいことが1つあります!それは、「夜間の水温に注意すること」です。実は、夏の水温管理が難しく感じてしまう理由がここにあります。そして、乗り越える秘密も夜間水温に関連します。日中に水温が上がってしまうと、夜間が涼しくても、水温がなかなか下がってくれません。そうなると、翌日の朝に太陽が登ってくると、また水温上昇のサイクルに入りますが、1日のスタート時点の水温が高いので、日中どんなに努力しても水温を下げるのが難しくなり、メダカは弱ってしまいます。私がおすすめするのは、水槽を北側か東側に置くことです。メダカは太陽の日を浴びた方が健康に育ちますが、一方で、水温が心配です。南側は絶対NGです!確実に日中に水槽の中は熱々の状態です!西側はどうかというと、夕方の西陽が心配です。西陽があたると夜間になかなか水温が下がりません。おすすめしません。ということで、初心者メダカ飼育者にとっては、北側か東側がベストです。

酸素の量対策編

さきほどの高い水温対策編でも少し触れましたが、水中の温度が高くなればなるほど、水中に溶けている酸素の量は減っていきます。日本で売られているメダカは、一般的には日本のメダカを品種改良したものなので、日中30℃以下くらいの水温なら余裕で耐えられますが、それ以上になると丁寧に飼育する必要があります。飼育数が増えたり、水草を大量に入れたりすると、水中の酸素消費が上がるので、エアレーションなど人工的に酸素を追加する必要があります。
酸欠にならないようにするコツは、高水温対策+エアレーションです。エアレーションで酸素が水中に溶ける秘密は、水面が動いているからなので、水面さえ動かしておけば実は酸素量が増えます。人によっては、水面に風を送ったりして、酸素量を増やしている人もいます。エアレーションは水槽のサイズにあったものを選びましょう。メダカは流れが静かな水を好むので、エアレーションは弱めで十分です。

ちなみに、私の屋外飼育水槽では、エアレーション無しの容器もありますが、飼育匹数を少なくして、たっぷりの水量(1匹あたり2L〜4Lくらい)、こまめな水換え(1日1回〜2回)、朝だけ太陽があたる場所(日中は日陰)に置くことで、元気に1匹も死なせずに飼育できていますが、エアレーションはあった方が飼育は楽になります。

栄養不足の対策編

次は栄養不足についてです。夏になると水温の上昇に伴い、メダカも代謝があがります。どんどんエネルギーを使うわけですね。そうなると消費したエネルギーを補うために餌をよく食べます。夏場は餌をしっかり与えましょう。3分から5分で食べ切れる量を、1日数回に分けて与えると良いです。餌の大きさが大きいものよりも、小さいものの方が腸に詰まらず、不幸な事故にならずに済みます。また、腸の詰まり対策としてオススメするのが、エサを与える時間です。辺りが暗くなる3時間ほど前からまでに、その日の餌やりを終えること。例えば、夏の日入り(日が沈む)の時間が18時50分頃だとすると、だいたい遅くとも16時頃を最後に、餌やりをストップするということです。もし、その日に餌やりを忘れてしまったとしても、慌てて夕方遅い時間に餌を与えるくらいなら、その日は餌やりをあきらめてしまって、翌日に与えると良いでしょう。
屋外飼育であれば、水の中に自然繁殖する小さな生き物を食べることができるので、餌やりを1日2日忘れたところで、餓死することは滅多にありません。

水中の有害物質対策編

メダカの飼育水について悩む方も多いと思います。私のところでは、簡単な方法で飼育水の管理をしています。それをこれから解説します。
有害物質を除去する方法は至って簡単で、上水からバケツに水を15Lくらい汲み、通常は丸1日おいておき、その水を水換えに使います。丸1日ほど空気にさらしておけば、蛇口から出てくる上水の中に溶けている塩素はほぼ完全になくなっていると考えて良いと思います。人に感染症をもたらす微生物の働きを消すために、法令で水道水中に塩素を残留させることが定められていますので、地下水では無い限り、この方法で対処可能です。市販の塩素除去剤(カルキ抜きとして売っている場合もあります)を使う方法もありますが、その場合は用法用量を守ってください。

また、雨水をバケツなどに溜めておいてメダカの飼育水に使う方法があります。この方法は初心者には非推奨ですが、もしやる場合に特に注意が必要なのは、pHと大気中の汚染物質です。雨水は酸性に傾いている(低いpH)ため、メダカの飼育容器を雨水が入る場所に置いておくのは危険です。pHは有害物質ではありませんが、排ガスなどによる大気汚染により微小な粒子が浮遊しているため、雨水には大気汚染物質がほぼ確実に含まれています。この雨水を使う方法では、大気中の汚染物質がメダカの飼育水に入ってしまうので、十分に注意して、浮いているゴミや沈んでいるゴミを丁寧に取り除く必要があります。

忘れてはいけない有害物質には、アンモニアと亜硝酸と硝酸があります。耳にしたことがある方もいると思います。どれもメダカにとって毒性がある物質ですが、アンモニア → 亜硝酸 → 硝酸という順序で主に水中の微生物により分解されていきます。アンモニアは私たちの尿などにも含まれていますが、メダカでは主にフンや食べ残した餌から発生します。水中には目に見えない微生物がたくさんいて、壁面や底面、水草の表面、砂利や砂の表面などに付着して生きています。彼らは、水槽の中の掃除屋という役割を持っていますが、こうしたフンや餌などを比較的無害な物質に分解する途中で、アンモニアや亜硝酸などの有害な物質を発生させてしまいます。
どうしても発生してしまうため、有害物質への基本的な対策としては、1) 食べ切れる量の餌を与える、2) 餌が残った場合は可能な限りスポイトなどで取り除く、3) 定期的な水換えをして発生したアンモニアや亜硝酸や硝酸を取り除く、4) 水槽に多すぎるメダカや他の生き物を入れない、5) 水草など生きた植物の根を水中に入れて吸収してもらう、6) 水槽を洗うときは塩素などの抜けた飼育水や汲み置きの水を使う、などがあります。どれか一つではなく、全てを意識するとメダカ飼育での失敗をかなり無くすことができます。
1)と2)は説明を省きます。
3)の定期的な水換えは、この観点から年間を通して非常に重要です。アンモニア → 亜硝酸 → 硝酸と分解されていく過程はゆっくりと進みますが、アンモニアや亜硝酸はメダカにとって極めて毒性が高いため、日頃から水中から除去する工夫が必要です。その最も基本的な方法で、多くのアクアリストが採用している方法がこの定期的な水換えです。夏場の話としては、高水温対策でも水換えを推奨していますので、そちらでカバーすることが可能です。
4)の多すぎる生き物問題ですが、これはどういうことかと言いますと、生き物はメダカに限らず水槽に混在します。バクテリア、水草、エビ、タニシ、コリドラス、ヤゴなど様々に挙げることができます。ヤゴ対策は別の記事で書いていますので、そちらを参照ください。メダカも合わせたこれらの生き物はお互いが関係していますが、餌を食べる生き物もいれば、他の生き物を食べるものもいますし、時にはこうした水中の生き物が死んでいき腐敗して水質を汚していきます。例えば、可愛いからと過剰にたくさんの生き物を水槽に入れると、残飯が増えてしまったり、大量の糞尿で汚れてしまったりと水質悪化を早めてしまいます。もちろん、水量をその分多くすれば、急激な水質悪化を防ぐことができるのは、水族館や自然界の海などを考えてみれば明らかです。しかし、初心者やあまり飼育にお金をかけられない場合には、たくさん飼育するのではなく、1匹1匹を丁寧に飼育するようにすると良いと思います。
5)の植物の根に吸収してもらう話ですが、これは、そのままで、一般に植物は根から栄養素を吸収します。糞尿や残飯などがバクテリア(微生物)に分解されると、植物にとっての栄養素である窒素を取り込むことが出来ます。例えば、私が個人的に飼育している水槽ではアボカドの根を水槽に入れていますが、数ヶ月経過しても、水換え頻度は非常に低く抑えられています。とても飼育が楽なので、植物の力のすごさを実感しています。よく小型ビオトープなどで、メダカと一緒に色々な植物を水に入れますが、あれも同じ原理です。ただし、植物も生き物なので、例えば落ち葉などもあるため、余計な水質変化を避けるためには、こうした枯葉や崩れた根などは水中から取り除くと良いです。
6)の水槽掃除の話は、初心者の方で間違った考えをしてしまい、結果としてメダカを死なせてしまう原因になっています。この話は実はものすごく重要です。私たち人間は掃除をするときの水は水道水などから出したものを直接使います。これは「綺麗」な水として教わっているからですが、さきほど説明した通り、水道水には「塩素」が入っています。人間にとって「綺麗」な水でも、メダカにとってはそのまま使うと「有害」になります。この話は、実は水中のバクテリア(微生物)にもいえることで、毒性の非常に強いアンモニアを、比較的無害な硝酸までゆっくりと分解してくれる「有益な生き物」を、この塩素入りの水で洗ってしまうことで殺してしまいます。なぜ1つの水槽に何匹ものメダカを泳がせても元気なのでしょうか?それは、このバクテリアに秘密があります。メダカの腸内や皮膚、そして空気中などにはバクテリアが存在します。メダカ1匹を入れると、その1匹にあった量のバクテリアが水槽に定着します。バクテリアは水中のどこに定着しますか?...先ほど解説した場所に居つきます。バクテリアは一般に分裂して増えていき、1匹が2匹に、2匹が4匹に、4匹が8匹に...という具合に倍々になっていきます。バクテリアの一生は短いので、ものすごい早さで増えていきますが、それでも1匹のメダカが出す糞尿や残飯を分解して無害にできるまでは、私たち人間にとっては時間がかかります。せっかく苦労して増やしたバクテリアも、塩素入りの水をかけてしまうと一気に死んでしまい、メダカの糞尿や残飯などを硝酸まで分解する時間が長くなり、有害なアンモニアや亜硝酸が水槽内に溜まりやすくなってしまいます。水換えを頻繁にすると、あらゆる物質の表面に付着したバクテリアを流してしまうことは避けられません。それでも1回の水換えの量を減らして、こまめにすれば、バクテリアが減る量を少なくできますし、汲み置き水を使ったりすれば、バクテリアを殺さずに済みます。


以上、高い水温、酸素の量、栄養不足、水中の有害物質のそれぞれの解説を簡単ですが、書いてみました。それでも、すごいボリュームですね。一度で理解して実践するのは大変だと思います。次のチェックリストを用意しました。日々のメダカ飼育の助けになれば幸いです。ありがとうございました。

日々のメダカ飼育チェックリスト


- [  ] メダカの飼育の一つ一つを楽しもう!
- [  ] 夏場の水温は30℃未満。できれば18℃〜26℃に。
- [  ] 水は成魚1匹につき1L以上に。
- [  ] 容器は深くて大きいものを。
- [  ] 水換えは1日1回1/3ほど。
- [  ] 水換え用に1日汲み置いた水を。塩素はNG!
- [  ] 水槽は北や東に。日中は日陰になるように。
- [  ] 水槽に雨水がなるべく入らないように。
- [  ] 弱めのエアレーションを。
- [  ] 餌は1日3回から5回。3分から5分で食べ切れる量。
- [  ] 餌は暗くなる3時間前までに与える。
- [  ] 餌は細い粒のものを。
- [  ] 餌が残ったら取り除く。
- [  ] フンが溜まっていたら取り除く。
- [  ] メダカが死んでいたり、枯れ葉があれば取り除く。
- [  ] バクテリアは味方。塩素はNG!
- [  ] 強毒のアンモニアと亜硝酸。水換えで除去を。
- [  ] 植物の根で毒性物質を吸収してもらおう!