2021/11/04 18:30
メダカを新しく購入した時、すごくわくわくしませんか?
日本原産のメダカは本州から九州などの温帯から亜熱帯気候を中心とした地域で飼育する分には比較的容易に飼える魚種として、アクアリウム初心者の方に非常におすすめの魚です。見た目も可愛く、近年では色や体型なども様々な改良品種が増えているため自分の好みに合わせた品種を発見するのも楽しみの一つにできます。
この記事で学べること
新しくメダカを購入して飼育し始めてからの病気・死亡のリスクを減らせるようになります。
今回は購入した直後に持ち帰ってから飼育水槽に移すまで気を付けるべきことを、メダカ飼育初心者向けに簡単に解説してみます。
メダカをショップで購入すると、やや厚めの丸底ビニール袋に飼育水と酸素が注入された状態で受け取ると思います(ショップにより梱包は異なります)。梱包されたメダカが家に着くと、すぐにでも飼育水槽にメダカを移したくなるでしょう。
ただし、ここで注意点があります。
メダカ飼育初心者の方は飼育容器に移す前に次のことに注意を払いましょう。
1. メダカのストレス状態
2. 飼育水の水質
3. 病原菌の混入
容易に飼育できるメダカですが、生き物ですので飼育する上で気をつけるべきことはあります。さて、本題の購入後に飼育水槽に移す前にすべきことですが、上記3つの注意点に関連することとして次のことをやりましょう。
飼育水を用意する
手順ですが飼育容器(ガラス水槽、プラスチック容器、バケツ、タライ、トロ舟など)に飼育水を容易します。水量の目安としてはメダカ1匹につき1Lほどを基準とすると分かりやすいでしょう。飼育水に使う水の塩素(カルキとも言う方もいます)は中和しておきましょう。塩素の中和は、水を1日2日太陽の下で汲み置きしたり、中和剤を利用します。中和剤を利用する場合には規定量をしっかりと守りましょう、さもなければメダカが死にますので。
飼育水が用意できたら、次は水合わせです。
温度の水合わせ
まずメダカを袋から取り出す前に袋の外側を真水で洗い、袋にメダカを入れたまま飼育水槽の水に少なくとも30分から1時間ほど水面にビニール袋ごと浮かべましょう。こうすることで、ビニール袋中の水温と飼育水の水温を徐々に同じ温度にします。これを水合わせと言います。メダカは急激な温度変化に弱いので、水温の水合わせは重要です。
pHの水合わせ
その後、メダカをビニール袋から出しますが、ここでボール容器や空の豆腐容器など何でも良いので、最初にビニール容器の水とメダカだけを器に入れます。その次に、少しずつ飼育水をメダカを入れた容器に注ぎましょう。可能なら点滴のように1滴ずつなど非常に少量が良いですが、メダカは比較的強い魚のため大スプーン1杯量ずつを気持ち1分程度間隔を空けながら1杯ずつ入れていくだけでも大丈夫だと思います。メダカなどの魚は水温の他にpHなどの酸性・アルカリ性の変化にも敏感で、酸性に傾き過ぎたり、アルカリ性に傾きすぎたりすると弱ってしまい、最悪死んでしまいます。
pHの水合わせ時には、よほどの酷い飼育者の劣悪な飼育水でなければ、これからメダカを飼育しようとする飼育水に混ぜても大丈夫です。ただし、もしメチレンブルー水溶液など薬品が使われている水でメダカを運んできた場合には、混ぜない方が良いでしょう。
以上の2種類の水合わせを行えば、最低限の水合わせは完了なので、いよいよメダカを飼育水に移します。
メダカの移動
飼育水にメダカを移動するのですが、メダカの体の皮膚に相当する部分には粘膜や鱗があり、メダカの体を保護しています。メダカに過度のストレスを与えたり、塩素が残っていたり、扱いが雑な場合には粘膜や鱗が取れてしまいメダカの免疫力が低下します。このような理由があるため、メダカを移し換える時にはなるべくメダカ本体には触らない方法が良いでしょう。例えば、ボール容器などをそのまま飼育水に沈めてメダカが自分から飼育水に泳いでいくのを待つやり方などがおすすめです。
いよいよ飼育開始
さて、飼育環境にメダカを移せたので、待望のメダカライフの始まりですね。メダカ初心者、淡水魚飼育の初心者の方に向けた最後にこれだけは知っておいて欲しいことを書きます。メモの準備は良いでしょうか?
何の話かと言いますと、餌(エサ)と毒素とバクテリアの関係です。
メダカを飼い始めたら餌をあげたくなると思います。わかります。私もそうです。しかし、ちょっと待ってください。どのくらいの量の餌を与えるべきでしょうか?
メダカは私たち人間とは異なり胃がありません。ということは満腹感というものがありません。人間には満腹中枢という働きがあり、必要以上に胃に食べ物を入れることを防ぐ仕組みがありますが、メダカにはありません。与えれば与えるだけ食べてしまうと考えましょう。
基本の餌やりは、3分から5分ほどで食べ切れる少量を朝・夕の2回を与えます。そして夕方17時以降(早春、秋、冬だともう少し早く)の日の沈む2時間前からは与えないようにしましょう。
ただし、飼育開始の頃は新しい環境に慣れていない可能性もあり餌をあまり食べないかも知れません。このような時は餌やりの頻度を下げましょう。具体的には新しい環境に移ったその日は与えずに翌日から与える、などです。
こうすることで、メダカの食べ残しや糞尿による水質汚染が強くなる時期を遅らせることができます。
さて、ここでバクテリアのお話しです。私たち人間がうんちやおしっこをトイレですると水洗トイレなら水を流すだけで後は綺麗に保たれますよね。しかし、メダカの飼育水では、メダカの出した糞尿は誰が綺麗にしてくれるのでしょうか?
一般的に大きく2通りの方法があります。
1つ目は人為的に取り除くこと。
2つ目は濾過バクテリアと呼ばれる細菌に働いてもらうこと。
人為的に飼育水の汚れを取り除く
メダカは人間と同様にうんち、おしっこをします。それを定期的に、できれば2日3日に1度くらいの頻度で取り除きましょう。スポイトやホースで吸い出すのが現実的かと思います。
しかしこの方法は労力がかかります。そこで次の方法の出番です。
濾過バクテリアに働いてもらう
濾過システムをご存知でしょうか?よく熱帯魚屋などに販売されている濾過システムは主に物理濾過と生物濾過という2つの仕組みで成り立っています。物理濾過とは字のごとく糞や枯れた水草などの大きな物質を、網の目のようになった構造で取り除くものです。仕組みはキッチン流しの三角コーナーを思い浮かべれば良いかと思いますが、三角コーナーでは網の目よりも小さいものは通過してしまいますね。これと同じことが物理濾過で起こります。つまり、大きなものは物理濾過でキャッチされますが、小さなものや水に溶けてしまっているものは通過してしまいます。
糞について考えてみると、糞が分解されるとアンモニアが生じます。アンモニアには毒性がありメダカにも有毒です。これが飼育水中にたまっていくと、いつかメダカの体調が崩れていき最悪死に至ります。アンモニアが溶けた水は物理濾過を通過するのです。
そこで生物濾過の登場です。濾過バクテリアと呼ばれる細菌がいて、これがメダカのいる水中で勝手に繁殖します。水道水から新しく立ち上げた飼育水には当然に濾過バクテリアは存在せず、よくメダカの体表や水草や貝などに付着していたり、空気中からの落下などで混入します。この濾過バクテリアは何か物体の表面が大好きです。例えば砂利などを飼育水の底に敷くと、砂利の表面に濾過バクテリアが住み着き、アンモニアなどの有害なものをほぼ無害な硝酸塩の形まで分解して(変化させて)くれます。この濾過バクテリアに十分に働いてもらえれば、メダカの飼育水は綺麗なまま維持することができるのです!(すごいですね)
しかしちょっと待ってください。濾過バクテリアの能力は本当に発揮してもらえるのでしょうか?答えはYesでもありNoでもあります。どういうことか説明しましょう。
メダカ初心者、飼育初心者の方には少し難しいと感じるかも知れませんか、しっかり読み進めていただければ必ず理解できます。安心してください。
まず濾過バクテリアの性能ですがメダカの匹数に応じた数まで増えるポテンシャルを持ちます。
そして、その数が定着できる場所の面積(表面積)が必要です。
また濾過バクテリアの繁殖には時間がかかります。
順を追って説明しましょう。
1つ目の濾過バクテリアの数の話
濾過バクテリアは糞尿を餌としてアンモニア(毒性・強)が発生し、さらには亜硝酸(毒性・中)を経て硝酸塩(ほぼ無害)まで分解されます。この時、糞尿をアンモニアに変えるバクテリア、アンモニアを亜硝酸に変えるバクテリア、そして亜硝酸を硝酸塩に変えるバクテリアは通常異なります。それぞれの微生物が糞尿を元にしてどんどん増えながら分解が促進されるのです。
濾過バクテリアはどの程度まで増えるかというと、餌があるだけ増える、といえます。バクテリアは自分の体を2つ、4つ、8つとどんどん分身を作っていき増えます。餌があるから増える、増えるから餌を必要とする、というサイクルをどんどん回します。これらバクテリアを含む微生物は目に見えませんが、水中では1ml中(1/1000リットル)に10万匹ほど生息していると言われています。すごい数ですね。濾過バクテリアが増えれば増えるほど、餌を必要とします。その繁殖量の限界が飼育水中にいるメダカをはじめとした生き物の数(どの程度の不要な有機体があるか)により決まるのです。
よって、飼育水の中にいる生き物の数まで濾過バクテリアが増えると言えます。
2つ目の話しに移りましょう。
2つ目の濾過バクテリアの定着について
さて、濾過バクテリアの増殖についてはざっとご理解いただけたでしょうか。この話を踏まえて2つ目の定着についてお話しします。
濾過バクテリアは水草や砂利など物体の表面が大好きというお話しを先ほどしました。砂利や水草などはよく見ると表面がデコボコしている部分があります。このように、場所によっては非常に入り組んだ複雑な形をしていて、これを広げた物質の表面の面積を合計したものが表面積と呼ばれています。この表面積は、平らな面よりも凸凹のある、たとえばリアス式海岸や雪の結晶のような形などの複雑な面を持つものほど大きくなります。よく物理濾過でも使われる活性炭には細かい穴がいくつも空いており、その穴の面を足し合わせた表面積は大きいのです。砂利を水底に敷くのも同じで、砂利の表面は凹凸がたくさんあるため表面積が大きくなります。
濾過バクテリアが定着できる場所はこの表面積により決まります。熱帯魚ショップなどで濾過システムとして販売されている濾材(ろざい)は表面積が大きくなるように設計されたものになります。初心者向けのため濾材の種類についてはここでは語りませんが、興味のある方は濾材とpHの関係について調べてみると良いでしょう。
表面積が広いほど濾過バクテリアの定着数が多くなる、裏を返すと表面積が狭い場所(水槽に砂利や水草などの複雑な構造物が無い状態など)には濾過バクテリアの定着数が少なくなります。濾過バクテリアが繁殖して多く定着してくれればくれるほど、水質管理が非常に楽になります。アクアリストは濾過バクテリアの繁殖、定着に非常に気を使います。それだけ大事だからです。
ここまで濾過バクテリアについて学んだあなたは、初心者とは呼べないくらいまでの知識を備え始めています。このままメダカ飼育に大切な話しをより深く理解してしまいましょう!ついて来てくださいね。
3つ目の濾過バクテリアの繁殖には時間がかかる
繁殖に時間がかかること、つまり繁殖速度について知りましょう。これまでの話しにプラスして3つ目の繁殖速度を知ると、メダカ飼育の難易度がぐっと下がります。
濾過バクテリアが増えるとき、1匹が2匹に、2匹が4匹に...というように分身を作り増えていくという話しをしました。最初から数が大きければ、例えば100万匹いれば次の瞬間には全て分裂してくれれば200万匹に増えます。こういう環境なら濾過、つまり有害物質の除去も早いでしょう。しかし最初は数が少ないのが普通です。まして水道水を中和して作った水、水道水を汲み置きして作った水は、水道水という人間が利用できるようにバクテリアなどの微生物を極力除去した水が素となっているため、濾過バクテリアの数は期待できません。この状態から濾過が機能するようになる数に達するまでに数週間から数ヶ月かかります。大分時間を必要とするのが分かると思います。
ここまでの3つの濾過バクテリアの話しを通じて大事なことが見えてきます。
1つ目の数の話しと2つ目の定着の話しから1つ目の真実が導かれます。それは、定着する表面積が少ない環境では濾過バクテリアは水質濾過に必要な十分な数まで増えない、ということです。さらに、3つ目の繁殖速度を加えると、濾過バクテリアの繁殖、定着までは人為的な濾過が必要になる、ということです。記憶に太字でメモしておいてください。
初心者に最も多い飼育失敗の一つがこれで説明できます。
想像してみてください。ペットショップにいきメダカを眺めていました。メダカが群れで泳ぐ様は、「メダカの学校」にもあるように私たちにとって非常に馴染みのある光景ですし飼育難易度は入門ランク、そして大掛かりな設備も不要で飼育可能ともあり、意気揚々とセット割があった10匹のメダカを買いました。パッキングしてもらい酸素も完璧、ついでに餌、水槽、塩素中和材、水草、砂利、投げ込み式フィルターも購入しました。家に持ち帰り飼育水槽を準備して水槽立ち上げ動画を参考に初のメダカ水槽の準備も完了です。さあ、水合わせも済み、いざメダカ10匹を飼育水に入れました。気をつけて翌日から餌やりを開始しました。メダカはお腹を空かせているだろうと考えましたが、我慢して少量ずつ与えます。さてどうなるでしょうか?数日後、メダカは全滅していて水底に沈んでいたり、水面に浮いています。死んでしまいました。なぜでしょうか?
答えは簡単で濾過バクテリアが十分に繁殖、定着していなかったから。濾過バクテリアの定着には時間がかかります。特に新しく水槽を立ち上げたときは尚更です。今回のケースでは最初から10匹という多くのメダカを飼育し始めました。10匹分の糞尿が毎日蓄積していき、バクテリアの力によりアンモニアが生成されます。しかし、アンモニアをより毒性の少ない亜硝酸に分解してくれるバクテリアが増えてくるのはもうしばらく後です。その間、水槽には有害なアンモニアが増え続けます。餌をやればやるほど、メダカが糞尿をすればするほどアンモニアは増えてしまうのです。こうなると、メダカの飼育水を1/3量程度を1日か2日間隔で交換する必要があります。しかし、初心者飼育者なので、メダカのわずかな異変に見ただけではなかなか気付けません。水換えを大胆に全て行う必要あったり、塩水浴などの弱った状態や病気な個体を治癒する方法の経験もありません。また水の変化は目で見るだけでは初心者にはほぼ分かりません。熟練者にも危険信号が出るまで分かりにくいのです。なので水質検査薬などを使い定期的に検査します。これは初心者の方にとってはやり過ぎかもしれません。どうすれば良かったのでしょうか?
私ども招福メダカとしてのおすすめは、初のメダカ飼育は1匹2匹の少数からスタートしていき、なおかつ可能なだけ水量の多い飼育環境を用意するということです。
メダカの数が少なけれが排出される糞尿も少なく済み、濾過バクテリアの数もより少なく済みます。さらに水量が多ければそれだけ水質の変化はゆるやかになるため、アンモニアが発生し始めても、アンモニア濃度は緩やかに変化していきます。この状況なら時間が稼げるため、余裕を持って飼育に当たれます。何も高価な濾過フィルターをこの規模のメダカ飼育に用意する必要はありませんし、高価な濾材はそれこそ不要です。この数ならメダカも元気に泳ぎ回るスペースがあるので、ストレスも少なくなります。メダカのストレスも減り、飼育者のストレスも減る。こういう飼育スタイルなら毎日が彩り豊かに楽しく過ごすことができると思います。
生き物のことを知り、考え、飼育していくのはメダカに限らず、アロワナ、ガー、ポリプテルスなどの古代魚や金魚、鯉、グッピー、カエル、イモリ、トカゲ、インコなどの鳥、フェレット、犬、猫などどの生き物を飼育する人は大事にしていただきたいと思っています。
招福メダカでは、今後もメダカ飼育者にためになる情報発信、メダカ飼育がより楽しくなる情報発信をしていきたいと考えています。
次回の記事の更新を楽しみお待ちいただければ幸いです。